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書評

【書評の3冊目】アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る

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1.「アフターデジタル」を要約すると

要約

  • 人は常時デジタル環境に接続している状態になり、リアル行動も含めたあらゆる行動データが蓄積されるようになる。これをアフターデジタルの世界と呼ぶ。
  • 日本企業の傾向として、オフラインにあるものを、無理やりオンライン化しようとする傾向がある。
  • アフターデジタルの世界では、デジタルで接点をいかに取るかという顧客志向の視点が必要。そして、顧客接点データが膨大になると、企業間の競争原理は「この接点ごとの行動データを使ってどのように良い体験を作り、接点間を移動させ、自社サービスのカスタマージャーニーへの顧客吸着度を高めるか」というものに変わってくる。
  • 行動データの蓄積により、顧客がどのようなサービスを好むのかも予測される。データを集めて顧客のニーズを深く理解できるようになるため、専門的かつ顧客の状況に寄り添ったサービスの提供が可能になる。
  • 行動データのような「データのやり取り」が新たなインフラとなり、最もお金を生み出しやすい「購買データ」をより多く持ち、それを顧客IDとつなげられているプラットフォーマーがトップに君臨する図式 が生まれる。新しい産業構造において最上位に来るのは、決済を握ったプラットフォーマーとなる。

 

 

2. 「アフターデジタル」の紹介

最近読んだ本の中では最も衝撃的な本でした。インターネットが従来の産業界の壁を溶かし、縦横無尽に競合が入り乱れて競争環境が変質する様が具体的な事例を持って生々しく書いてある良書です。1つよく理解できたのはこれまでの競争戦略上の要点と言われてきた人、モノ、金が依然として重要なリソースであることには変わらないものの、これらにもまして情報、特にカスタマーの生の情報が決定的に重要になってくると言う点です。

 

なぜGoogleは膨大な開発費が求められるGoogle関連サービス、例えばGoogle Chrome等を開発し無料で我々にサービスするのか。それは我々の行動情報、状況情報、属性情報を広く収集するためのツールであるという見方もできます。われわれは決してこれらの有用なサービスを無料で使用しているのではなく、我々の行動情報やその他の情報を渡す事を対価にしているのです。アップルのティム・クックCEOはGoogleやFacebookを代表とするようなこれらの情報収集活動に対して否定的、批判的な見解を持っていますが、この議論の良し悪しは別として、情報がお金以上に価値を持つ判断をしていると言う1つの見方です。

 

この情報収集と言う点で言えば、アナログがデジタルに勝る事は決してなく、経営、事業オペレーション、サプライチェーンを含めて全てをデジタル化できたものがいち早く情報を収集しこれを活用できる基盤を構築することができ、産業界の頂点に君臨することができる唯一の条件です。今で言うGAFAはその象徴的な例です。

 

本書では、日本企業や、産業界が持つデジタルに対する認識のズレ、危機感のなさを指摘しています。例えば小売の例を見てみると、日本企業はリアルアセット(例えば、実際の店舗やそこで働く人を中心とした事業、これをオフライン事業と呼んでいます)が依然として主でECやオンライン売買というのは依然として従属の関係です。これに対して、中国やアメリカの企業の多くでは、オンラインが主でオフラインが従属する関係で事業をデザインしています。さらに言うと、オンラインとオフラインと言う切り分け方で事業を見ると言う考え方そのものもなくなるといいます。

 

これらの世界的な潮流に対して、日本は完全に遅れをとっています。もはやこの点では後進国と言って良い状況です。実際にアメリカや中国とするアジア諸国ではUberを中心とした移動手段一つにとってもデジタル化が大きく進んでいます。アプリを中心として収集された、情報が徹底的に分析され、サービス提供者、利用者双方に大きなメリットを生んでくれています。消費者にとってはドライバーが信用に足る人なのか、同じくドライバーにとっても商社、利用者が望ましい人なのか否かというものがスコア化されています。一度、使ったらわかりますが、提供者利用者ともにお互いにとっていい相手であろうという意識が芽生え、実際に行動も変わるのです。デジタルはビジネスモデルやサプライチェーンなどの事業環境はもとより、人の行動すら変える力を持つというデジタルの持つ破壊力を深く理解、体現し、経営や事業を作り変えなければ日本企業は世界の潮流から更に遠のいていく可能性は高く、危機感を保つ必要があります。

 

本書はこれらの危機感を持たせてくれるという点でも貴重な一冊です。

 

 

経営、事業のデジタル化についての別の記事もあります。

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3.「アフターデジタル」の学びのポイント

モバイルやIoT、センサーが偏在し、現実世界でもオフラインがなくなるような状況になると、「リアル世界がデジタル世界に包含される」という図式に再編成されます。こうした現象の捉え方を、私たちは「アフターデジタル」と呼んでいます。 アフターデジタルの社会では、人は常時デジタル環境に接続している状態になり、リアル行動も含めたあらゆる行動データが蓄積されます。それは、第1章からも分かると思います。企業側からすると、ユーザーとの接点が急激に拡大し、リアルの場所は「密にコミュニケーションできるレアな接点」になると言えます。

 

(引用元)アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る 藤井 保文 (著), 尾原 和啓 (著)

 

例えば、技術志向で物作りを行ってきた結果、技術と物はあってもどのような商品にしたらよいか分からず、誰が使うかという体験側のことが考えられていないケースがよく見られます。アフターデジタル的に考えると、デジタルで接点をいかに取るかという顧客志向の視点が必要なので、こうした技術先行、モノ先行の考え方は親和性が低いです。また、日本ではオフラインにあるものを、無理やりオンライン化しようとする傾向があるように思います。例えば、オフライン的なチラシ広告の見せ方をそのままウェブに適用したり、接遇やデザインの素晴らしいオフライン店舗をそのままオンラインで再現しようしたりするのはその例です。それらはすべて逆OMO型であり、アフターデジタル的な思考法ではありません。

 

(引用元)アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る 藤井 保文 (著), 尾原 和啓 (著)

 

OMOを創る時の思考:RPG型世界観ビジネス  ここまでOMOとは何か、およびその重要性について話を展開してきました。ここで、考え方のコツを紹介したいと思います。実はOMO型のビジネス発想はRPGゲームに非常によく似ています。  OMO型で成功しているビジネスの多くに存在する共通点として「ゲーム的にインセンティブ獲得が設計されている」という点が挙げられます。

 

(引用元)アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る 藤井 保文 (著), 尾原 和啓 (著)

 

顧客接点データが膨大になると、企業間の競争原理は「この接点ごとの行動データを使ってどのように良い体験を作り、接点間を移動させ、自社サービスのカスタマージャーニーへの顧客吸着度を高めるか」というものに変わってきます。自らの経済圏への吸着度を高め、より包括的なデータ収集を行うという目的のためであれば、「体験価値が高くてユーザーを大量に抱えている一方で、まともにマネタイズされていない」といったサービスを買い上げて自社経済圏に組み込みます。シェアリング自転車がその最たる例と言えます。データ取得を担当する事業や、マネタイズする事業などを含めて、データを共有することでユーザーを吸着する経済圏が作られています。これが「データエコシステム」です。

 

(引用元)アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る 藤井 保文 (著), 尾原 和啓 (著)

 

平安保険がリアルタイムに個別化対応したサービスを提供できるのは、サービスを支える仕組みに秘訣があります。顧客との接触履歴を一元的に管理する社内用データプラットフォーム「LCCH」(Life Customer Contact History)があり、顧客ごとに過去に発生した様々なやり取りの記録を収集し、顧客一人ひとりのサービスカルテを作成しているのです。カルテの中では、これまで提供したサービス、まだ提供していないサービスを管理し、またその顧客がどのようなサービスを好むのかも予測されています。データを集めて顧客のニーズを深く理解できるようになったため、専門的かつ顧客の状況に寄り添ったサービスの提供を可能にしています。

 

(引用元)アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る 藤井 保文 (著), 尾原 和啓 (著)

 

結果、「データのやり取り」が新たなインフラとなり、最もお金を生み出しやすい「購買データ」をより多く持ち、それを顧客IDとつなげられているプラットフォーマーがトップに君臨する図式 が生まれます。GAFAもそのような動きを見せていますが、新しい産業構造において最上位に来るのは、決済を握ったプラットフォーマーになります。その下に来るのが、業界ごとに体験型で価値提供をしているサービサーで、その下にメーカーが位置づけられます。

 

(引用元)アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る 藤井 保文 (著), 尾原 和啓 (著)

 

ビジョンを体験寄り添い型に変えていくことを考えると、組織全体が顧客に対して「良い体験」を提供し続け、ずっと寄り添っていかないといけないわけですから、「最終的に顧客にどのような体験を提供し、どのような状態になっているのか」というゴール状態を共有して仕事をする必要があります。つまり、「ビジョンの主語は社会や顧客」になります。主語と言っていますが、 要は顧客がどのような状態になっているかを会社全体でイメージを共有できる言葉 になっていればよく、「我々は顧客にこうなってもらう、社会をこのようにする」という言葉でも構いません。提供している体験価値を、端的に表現する必要があります。

 

(引用元)アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る 藤井 保文 (著), 尾原 和啓 (著)

 

状況志向化するビジネス  次に、(2)事業戦略のレイヤーに移ります。このレイヤーでは主に事業のセグメント、ターゲティング、ポジショニングなどを定義します。アフターデジタルへの変革で最も重要なことは、「人・属性」ターゲティングから、「状況」に基づいたターゲティングに変えていくことです。

 

(引用元)アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る 藤井 保文 (著), 尾原 和啓 (著)

 

新しい時代においては「 行動データから体験を企画する」というケイパビリティが必要です。ここで重要となるのが、「行動データとは何か」という捉え方を変えることです。

 

(引用元)アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る 藤井 保文 (著), 尾原 和啓 (著)

 

 

4. 本書の基礎情報

【書籍名】アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る
【著者】藤井 保文, 尾原 和啓
【発行】日経BP
【発行日】2019/3/23
【頁 数】200
【読了時間】3.5時間

 

【目次】
第1章 知らずには生き残れない、デジタル化する世界の本質
1-1 世界の状況、日本の状況
1-2 モバイル決済は「すべての購買をIDデータ化する」
1-3 シェアリング自転車は「生活拠点と移動をデータ化する」
1-4 行動データでつなぐ、新たな信用・評価社会
1-5 デジタル中国の本質 データが市民の行動を変え、社会を変える
1-6 大企業や既存型企業の変革好事例「平安保険グループ」
1-7 エクスペリエンスと行動データのループを回す時代へ
第2章 アフターデジタル時代のOMO型ビジネス~必要な視点転換~
2-1 ビフォアデジタルとアフターデジタル
2-2 OMO:リアルとデジタルを分ける時代の終焉
2-3 ECはやがてなくなっていく
2-4 転覆され続ける既存業態
2-5 日本企業にありがちな思考の悪例
2-6 企業同士がつながって当たり前 OMOの行き着く先の姿

第3章 アフターデジタル事例による思考訓練

第4章 アフターデジタルを見据えた日本式ビジネス変革

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