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書評

【書評の1冊目】「具体と抽象」世界が変わって見える知性の仕組み

更新日:

1.「『具体と抽象』世界が変わって見える知性の仕組み」を要約すると

要約

  • 抽象化は物事の本質に迫ることができる思考法。
  • 抽象化と具体化の両方の思考間を行き来する能力を身に付けることで、本質を見極めながら具体的な施策を打つことができるの最強ビジネスパーソンとなる。

 

2. 「『具体と抽象』世界が変わって見える知性の仕組み」の紹介

皆さんは、抽象的だと言われて嬉しく思いますか?今の時代、どちらかと言うと抽象的より具体的であることをよしとされる風潮があります。

 

具体的であるほどわかりやすく、抽象的であるほどわかりにくい、と言うことです。

 

著者はこの具体的がもてはやされ、抽象的であることがネガティブに働いている風潮に対して一石を投じています。

 

それは、抽象的な思考こそが、物事の枝葉を切り捨てて未来を見るような本質に迫る思考法であり、物事を間に存在する共通の特徴や類似点に迫り、新たなアイデアを発想することにつながる思考であると言うことです。

 

さらにこの抽象的な思考により物事の間に統一感や方向性を見出し、一見バラバラに見えるがちな個別の事象に統一感や方向性を与え、全体をリードすることに貢献できる思考法です。

 

一方で、抽象的でありすぎると、場合によっては行動力が削がれ、さらに表層的な事象に重きをおく、より具体的な思考法を好む人たちとのコミニケーションギャップを生む原因となります。

 

この回避を含め、抽象的であることと具体的であることの間を自在に行き来し、それぞれの考え方を理解した上で、相手によってコミニケーションの方法を変えるなどのスキルを身につければ、本質を見極めながら具体性も維持し物事を改善、より良い方向に導くことができる骨太なリーダーになることができます。

 

 

3.「『具体と抽象』世界が変わって見える知性の仕組み」の学びのポイント

「具体=わかりやすい」「抽象=わかりにくい」というのが一般的に認知されているこれらの概念の印象です。つまり、抽象というのはわかりにくい、実践的でないといった否定的な形で用いられているのが大抵の場合ではないかと思います。このように、具体=善、抽象=悪という印象はとんでもなく大きな誤解です。これほど役に立ち、人間の思考の基本中の基本であり、人間を人間たらしめ、動物と決定的に異なる存在としている概念なのに、理解されないどころか否定的な文脈でしか用いられていないことは非常に残念なことです。 「抽象化を制するものは思考を制す」といっても過言ではないぐらいにこの抽象という概念には威力があり、具体と抽象の行き来を意識することで、間違いなく世界が変わって見えてきます。

私もキャリアのスタート当初は、具体的であればあるほど良いと言うことを信じてきました。その一方で、あまりに具体的であろうとするが故に、近視眼的だったり、考え方が直線的すぎることもあったと思います。

 

抽象化とは一言で表現すれば、「枝葉を切り捨てて幹を見ること」といえます。文字どおり、「特徴を抽出する」ということです。要は、さまざまな特徴や属性を持つ現実の事象のなかから、他のものと共通の特徴を抜き出して、ひとまとめにして扱うということです。  裏を返せば、共通の特徴とは関係のない他の特徴はすべて捨て去ることを意味します。

物事や思考の細かい枝を切り落とし、重要な幹の部分に集中して、本質に迫ろうと言う事は限られた時間や人といったリソースの制約を克服する有力な手段です。余分なものをそぎ落としながら本質に集中すると言う別の見方もできると思います。

 

その重要な視点が、まさに「具体と抽象」という視点なのです。ここでの「具体と抽象」というのは、「目に見えるもの(こと)と目に見えないもの(こと)」「表層的事象と本質」といった言葉にも置き換えられます。このような視点で、つまり「抽象度のレベル」が合っていない状態で議論している(ことに両者が気づいていない)ために、かみ合わない議論が後を絶たないのです。

私の経験上で言えば、抽象度のレベルの違いはキャリアの年数やできた経験の頻度や深さが影響すると感じています。よく聞くパターンとして、若手は上司に対して指示がわかりにくいと言うことであったり、指示がコロコロと変わって困ると言うことがあります。逆に上司側からすると、考えが短絡的で広がりが足りない、瑣末なことに焦点を当てすぎて本質に迫っていない、などと言うコメントを耳にします。正しく抽象度のレベルが合っていない会話の典型例です。

 

このような点からもわかるように、基本的に具体の世界は「量」重視であるのに対して、抽象の世界は「質」重視であるとともに、「量が少なければ少ないほど、あるいはシンプルであればあるほどよい」という世界です。

若手の頃には分析を1つするにしても、より網羅的でより量を追って仕事をしていました。逆に今のようなマネジメントのポジションになった後では、どちらかと言うと量よりも、数は少なくとも構わないのでキレのある高い質の考えやアイデアを好むようになったと言うのも事実です。

 

「哲学を持っている人」 「理念のある会社」 「コンセプトのはっきりした商品」  ……  これらに共通していることは何でしょうか?  それは、個々の事象に「統一感や方向性」があるということでしょう。つまり、哲学、理念、あるいはコンセプトといった抽象概念がもたらす効果は、個別に見ているとバラバラになりがちな具体レベルの事象に「統一感や方向性」を与えることであり、いわばベクトルの役割を果たしているのです。

私自身、経営する立場になってから哲学から会社のあるべき方向性のヒントを得たり、会社の方向性と理念の共通性を見ながら、検討したりする機会が多くなりました。これも1種の抽象思考との事例だと認識しました。

 

抽象化の目的は「一を聞いて十を知る」ことでしたが、その具体的な応用としての発想法がアナロジーです。アナロジーとは類推のことで、異なる世界と世界のあいだに類似点を見つけて理解したり、新しいアイデアを発想したりするための思考法です。先述の「たとえ話」もアナロジーの応用の一つで、新しい世界を理解するために、すでによく知っている身近な世界の知識を応用することです。

アナロジー思考は仕事を効率的に行う上でも非常に効果的です。すべてをゼロベースで考えるのではなく、過去の経験や知識から類似点を見つけ、それをアイディアとして新しい仕事やプロジェクトに当て込むことで、ゼロベースで考えるよりも法則で、効率よく検討できるというメリットを実感しています。

 

抽象化して話せる人は、「要するに何なのか?」をまとめて話すことができます。膨大な情報を目にしても、つねにそれらの個別事象の間から「構造」を抽出し、なんらかの「メッセージ」を読み取ろうとすることを考えるからです。 しかもそういった「構造」や「メッセージ」を複数の階層からなる抽象のレベルで理解しているので、一分なら一分なりの「要するに」を、三〇分なら三〇分なりの「要するに」を話すことができます。

抽象化にたけている人は確かに、要約力に優れている気がします。いい意味で物事を単純化し、その単純化した物事を構造的に組み直す力に長けていると感じます。

 

抽象化された知識や法則は、一見「高尚に見える」だけに取り扱いに注意が必要です。ルールや理論、法則は、大抵の場合は具体的に起こっている事象の「後追い」の知識だったはずです。ところが、一度固定化された抽象度の高い知識(ルールや法則等)は固定観念となって人間の前に立ちはだかり、むしろそれに合わない現実のほうが間違いで、後付けだったはずの理論やルールに現実を合わせようとするのは完全な本末転倒といえます。

これは、職位が高かったり、経験を多く積んできたベテランと言われる人々が注意しなければならないことです。著者の言うように、これらは固定化されやすいですし、正論でもあるので押し付け安いものでもあります。ただわれわれは、最終的には具体的な解決策だったり、行動が必要なわけで、これらの具体的な活動を阻害するものとして抽象化があるならばそれはあまり正しくない方向性だと私も感じます。

 

人類に思考という最強の武器を手に入れさせた一方で、「野性の行動力」を失わせたのも抽象という概念なのかもしれません。頭の中にとんでもなく大きな精神世界を作り上げた人間は、物理的な世界ではある意味動物に劣って当然ともいえます。「考えると行動ができなくなる」のも抽象の世界がもたらした弊害です。

同じく、抽象的に考えすぎることによって、動きが鈍くなったり、リスクを避ける思考になることも十分にあり得るので注意が必要だと自分自身に言い聞かせています。

 

これらの弊害も考慮していくと、結局重要なのは、「抽象化」と「具体化」をセットで考えることです。これらは一つだけでは機能せず、必ずセットになって機能します。福沢諭吉は「高尚な理は卑近の所にあり」という言葉を残しています。まずは徹底的に現実を観察し、実践の活動を通して世の中の具体をつかみ、それを頭の中で抽象化して思考の世界に持ち込む。そこで過去の知識や経験をつなぎ合わせてさらに新しい知を生み出したのちに、それを再び実行可能なレベルにまで具体化する。これが人間の知とその実践の根本的なメカニズムということになると考えられます。

やはり最終的には、抽象化と具体化はワンセットでバランスよく考え、行動に移していくことが重要だと理解しました。この2つの要素を兼ね備えた人が骨太のリーダーであると感じます。

 

この本は自分の思考のタイプやクセを気づかせてくれ、どうすればタイプの違う第三者とうまくコミニケーションができるかということを具体的に教えてくれる良書です。

 

 

4. 本書の基礎情報

【書籍名】「具体と抽象」世界が変わって見える知性の仕組み
【著者】細谷功
【発行】株式会社dZERO
【発行日】2014年12月7日
【頁 数】133
【読了時間】2.0時間

 

【目次】
序章 抽象化なくして生きられない
第1章 数と言葉: 人間の頭はどこがすごいのか
第2章 デフォルメ: すぐれた物まねや似顔絵とは
第3章 精神世界と物理世界: 言葉には二つずつ意味がある
第4章 法則とパターン認識: 一を聞いて十を知る
第5章 関係性と構造: 図解の目的は何か
第6章 往復運動: たとえ話の成否は何で決まるか
第7章 相対的: 「おにぎり」は具体か抽象か
第8章 本質: 議論がかみ合わないのはなぜか
第9章 自由度: 「原作」を読むか「映画」で見るか
第10章 価値観: 「上流」と「下流」は世界が違う
第11章 量と質: 「分厚い資料」か「一枚の絵」か
第12章 二者択一と二項対立: そういうことを言ってるんじゃない?
第13章 ベクトル: 哲学、理念、コンセプトの役割とは
第14章 アナロジー: 「パクリ」と「アイデア」の違い
第15章 階層: かいつまんで話せるのはなぜか
第16章 バイアス: 「本末転倒」が起こるメカニズム
第17章 理想と現実: 実行に必要なのは何か
第18章 マジックミラー: 「下」からは「上」は見えない
第19章 一方通行: 一度手にしたら放せない
第20章 共通と相違: 抽象化を妨げるものは何か
終章 抽象化だけでは生きにくい

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